旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 夕食が終わってオレリアが後片づけをしている間に、アーネストが浴室の準備をする。手足の裾をまくって浴室に向かうのを見るのが、なんとなく好きだった。
 片づけなども終われば、二人だけののんびりとした時間。かと思っていたのに、アーネストは持って帰ってきた資料を広げ始めた。
 彼が今、力を入れているのがガイロの夜間警備についてであるのだが、そのテーマが広がって、街全体の警備にまで波及したらしい。
 オレリアが夜遅くに暴漢に襲われかけたのは事実で、それを助けてくれたのがアーネストであった。あれは本当に運がよかったとしか言えないし、アーネストの忠告を無視して、夜遅くまで働いていたのも原因なのだが。
 それもあって、警備を強化する動きになった。
 ただ、ずっと裏で続いていたいざこざが落ち着いたというのもあるのだろう。人が戻ってきている、活気が出てきた、と昔からここを知っている者は口をそろえてそう言うのだ。
「ガイロの街って面白いですよね」
 ホットミルクに少しだけお酒をたらしたものを、アーネストに手渡した。オレリアのものは、お酒のかわりにはちみつがいれてある。
「何がだ?」
「居住区が家族構成によってわかれているところです。一区、二区に住んでいる人は未婚の人ばかりですよね」
「ああ、そのことか。ガイロはスワン族が多く暮らしていた場所だからな。その名残があるんだ」
 独身の者を同じ地区に集めることで、結婚相手を探しやすくているのだとか。
 そこでアーネストは険しい顔をする。
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