旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
第二十話
 オレリアがこつこつと片付けをしていたからか、なんとか五日目にはすべての部屋の床が見えるようになった。これから、物の仕分けをしていく必要があるものの、とにかく物が多い。
 不要なものはばっさりと捨てたり売ったりした。残ったものは、それぞれあるべき場所へと戻すか、物置行きなのだが。
(何かしら、これ……?)
 衣装部屋の奥の奥にあったのは、謎めいた木製の箱だった。生まれたての赤ん坊は入るだろうの大きさの箱。蓋の部分に蝶番がついていて、ぱかぱかと開閉できる形をしている。宝箱のようにも見える。
 好奇心からその箱を開けてみると、オレリアは目を疑った。
(どうして、こんなものが?)
 箱の中から出てきたのは、女性もののアクセサリーやら衣類である。リボンに首飾りに腕輪に、そして下着やらドレスまで。
(アーネストさまのお母様のものかしら?)
 じっくりと目を凝らして確認するものの、それらは真新しいものに見えた。つまり、どれもこれも新品なのだ。
 心臓がドキドキとしてきた。アーネストはこれを誰に送るつもりだったのだろう。
 てっきり、アーネストが興味のある女性はリリーだと思っていた。しかし、あのときの彼はリリーを通して違う女性を見ていたのだ。もしかして、その女性に送るものだったのではないだろうか。
 オレリアが押しかけてしまったから、アーネストが同情して、ここに置いているのでは――
(……だから、抱いてくれない? やっぱり、妻として見てもらえてない? わたしはアーネストさまの相手として相応しくない?)
 そんな想いが次から次へと生まれてきて、目頭が熱くなった。
 溢れそうになる涙を堪えるために、眉間に力を込めて、ふぅと息を吐く。
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