旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 箱の中から適当な首飾りを手にして、オレリアは家を飛び出していた。向かう先はアーネストのところ。
 この時間であれば、執務室内にいるはず。それに、ジョアンは「いつでも遊びに来てください。奥様が来てくださると、閣下の機嫌がよくなるので、僕たちも仕事がしやすいんですよ」なんて、言っていた。今となっては、その言葉の信憑性にも欠けるが。
 アーネストの執務室がある建物は、支部棟と呼ばれている。それは、ガイロ支部にある軍事棟という意味らしい。だから、ハバリー国内の主要都市部には支部棟がある。
 ガイロの支部棟からは関所へとも繋がっており、兵が交代で関所の見張りをしている。
 オレリアが支部棟のエントランスに姿を現すと「あ、奥様」と、アーネストの部下が声をかけてきた。オレリアがここに来た初日に、ジョアンがアーネストに「奥様を紹介してください。奥様の存在を周知させるべきです」と言ったため、その日のうちに一通り顔見せを行ったのだ。
「閣下でしたら、執務室におります。ご案内いたします」
「ありがとう」
 にっこりと微笑み、礼を口にする。
 場所はわかっているが、無意味に一人でうろうろと出歩くのもよくないだろう。
 彼に案内されて、アーネストの執務室まで向かう。扉をノックすると、入ってくるように言われた。
「オレリアか? どうした」
 お前は下がれと、案内してくれた部下に声をかける。
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