旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
「え? は? あ、ちょ、ちょっと。どういうこと? え? 閣下、奥様に言ってないの?」
 今度はジョアンまでもがあたふたし始める。だけどオレリアは、そんなことおかまいなしにまくし立てる。
「ですからこの首飾りは女性のものですよね!!」
 バンと机を叩くと、ケースに入ったままの首飾りがほわんと浮く。
「奥様、誤解です。それは閣下が、奥様に……」
「そんなの。二人で口裏を合わせれば、いくらでも言い訳できますよね」
「閣下! 閣下からもなんとか言ってくださいよ。奥様、完全に誤解しているじゃないですか。それもこれも、閣下が……あ!」
 ジョアンがいきなりアーネストの机の引き出しを開け、中身を取り出そうとしている。
「おい、ジョアン。お前、何をしてる」
「何をって。閣下が女々しく大事にしまっているアレを見せたら、奥様だって納得すると思うんですよ」
「やめろ、って。なんでお前がそれを知っている!」
 ジョアンが引き出しを開け中身を取り出すのを、アーネストが阻止している。だけど、ジョアンのほうが行動が素早く、するっと引き出しから何かを取り出した。
 そこにアーネストの手が伸びて、奪い返そうとするものだから、手にしたものが机の上に散乱する。
「……え?」
「な! お、おい!」
 アーネストが慌てて散らかった手紙をかき集めるものの、オレリアは二通、手にした。
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