旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
第二十一話
 そう言ったアーネストは、目の前のオレリアをじっくりと見つめた。
 八歳だった女の子が、すっかりと成熟した二十歳の女性へと変化した。
「アーネストさま」
 机の向こう側にいる彼女は、艶やかな唇を震わせながらその名を口にする。
「アーネストさまは、わたしのことを好いてくださっているのですか?」
 少しだけ眉間にしわを寄せたアーネストは、こっちへ来いと手を振った。
「そんなところじゃなくて、もっと近くに来なさい」
 オレリアも不安げに眉根を寄せてから、机をぐるりと回ってアーネストの横に立つ。すぐさま彼はくるっと椅子の向きを変え、オレリアの腰を引き寄せてから自身の膝の上に彼女を座らせた。アーネストが後ろより抱きかかえるような形である。
「え?」
「俺も自分の気持ちを伝えるのが得意ではないが。少なくともお前との結婚生活は続けていきたいと、今ではそう思っている」
 そっと耳元でささやくと、細い身体がふるりと揺れた。
「お前が二十歳になって離縁届を送ったのは、お前には俺よりも相応しい相手がいると思ったからだ」
 ずっとそう思っていた。
 守ると約束しておきながらも、側にいてやることすらできなかった。側におけば逆に危険にさらされるのではとも思っていた。だから、突き放す。
 そうするつもりだったのに、最後の最後でそれすらできなかったのは、やはり心のどこかで彼女を手放したくないと願っているから。
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