旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
第二十二話
 アーネストと初デートの約束を取り付けたオレリアは、その日が来るのを指折り数えていた。
 結婚前も、結婚した後も、アーネストと二人きりで出かけたことはない。
 その日は、いつもより早く目が覚めた。アーネストと二人で暮らすようになって十日が経ったけれども、残念ながら今でも二人は別の部屋で寝ている。
 エプロンドレスに着替えてキッチンへと向かうと、いつもより少しだけひんやりとした空気が出迎えてくれた。昨夜のうちに丸めていたパン生地を、オーブンの中へと入れる。普段と同じ作業をしているのに、時間が違うというだけで心が躍る気持ちになるのが不思議だった。
「……早いな」
 キッチンの入り口の扉を開け、壁に寄りかかるような仕草でアーネストがこちらを見ていた。
「おはようございます、アーネストさま」
「おはよう。今日は、いつもより早いのではないか?」
「だって。今日はアーネストさまと初めてのデートの日ですもの」
「そうか。俺は少し、身体を動かしてくる」
 アーネストと共に暮らすようになって知ったことの一つが、彼は毎朝、朝食の前に庭で身体を動かすのが日課であるということ。アーネストのように軍の上の役職についてしまうと、身体を動かすよりも事務的な仕事が多くなるらしい。ひどいときは、一日中、執務室にこもりっぱなしの日もあるとか。だから、自主的に身体を鍛えている。こんな休みの日くらい、ゆっくりすればいいのにとオレリアは思うのだが、毎日の積み重ねらしい。
 そういった真面目なところを知って、より好ましく思う。
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