旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
「オレリア、今日はどこを見てみたい?」
 アーネストはソーセージを挟んだパンを、手づかみで豪快に食べる。
「どこ、と言われましても、よくわかりません。実は、働いていた食堂と三区の家くらいしか行き来をしていなくて」
「一人で暮らしていたとき、お前の食事はどうしていたんだ?」
「あ、はい。食堂ですからまかないがありましたし。それ以外でも、必要な食材は食堂から分けてもらえたので」
 こちらに移ってからは、敷地内に商人が必要な物を定期的に売りにくるため、やはり街の中を出歩く必要がない。あまり街の中を一人で出歩かないようにと、ダスティンからも言われていたので、それはそれで助かっているのだが。
「今日は、アーネストさまと一緒だから、どこでも行けますね」
 オレリアの言葉にアーネストは戸惑いつつも「そうだな」と言った。
 朝食を終え、片付けをしてから、オレリアは着替える。せっかくのアーネストとのお出かけである。少しでもかわいい姿を見せたいというのが女心。だけど、ガイロの街を歩いているときは、アーネストがアーネストと知られるのはよくないらしい。つまり、お忍びと呼ばれるような、そのような形で出かけたいとのことだった。
 やはり、軍人としてのアーネストは、ガイロの街でも有名人なのだろう。
「お待たせしました」
 オレリアは淡い黄色のワンピースを選んだ。髪は大きな帽子の中に入れ込んだ。オレリアの髪の色は、ハバリー国内では珍しいため目立ってしまう。アーネストと顔を合わせたときに、黒に染めていた髪を元の色に戻してしまったため、また黒髪にするというのはそれなりに時間と手間がかかる。
「では、いくか」
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