旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
「では、次のところへ行こうか」
 アーネストがどこを案内してくれるのか、オレリアは楽しみで仕方なかった。
 ただ街の仲を歩いているだけなのに、アーネストが隣にいるだけで特別な出来事のように思える。他にもたくさんの人々が、街を行き交っているのだが、ここだけが夢の世界のようにも見えるのだ。
「二十歳の誕生日プレゼントを送っていなかったな」
 きょろきょろと周囲を見回しながら歩いていたオレリアは、アーネストのその言葉で彼の顔を見上げた。
「プレゼントですか? 今までアーネストさまが買ってくださったものは、全部、受け取りましたよ」
 あのとき、彼に突きつけた黒曜石の首飾りは、今は、オレリアの胸元を飾っている。
「だが、あれは九歳から十九歳までの誕生日プレゼントだ。十一個しかなかっただろ?」
 九歳の誕生日プレゼントは、黒と赤がまだら模様になっているリボンだった。十歳の誕生日プレゼントは、小さなうさぎのぬいぐるみで、十一歳の誕生日プレゼントは手巾。十二歳になれば髪飾りで、十三歳は腕輪、十四歳は耳飾り、十五歳はショール、十六歳はエプロンドレス、十七歳が首飾りで、十八歳でナイトドレス、十九歳で下着だった。
 それらをすべて一度にもらったオレリアだが、今は首飾りを身に付けている。恐ろしいことに、ドレス類はサイズがぴったりであった。それを問い詰めたら「ダスティンに聞いた」とのことで、そんなふうに気にかけてくれた事実にまた胸が熱くなった。ちなみに、十六歳で身体の著しい成長が止まったオレリアは、そこから服のサイズがかわっていない。かわったのは胸とお尻の大きさくらいで、下着だけは毎年新調していたが、それでも一年前に買ったと思われる下着のサイズは、今のオレリアにもぴったりだったので、ちょっとだけ驚いた。
< 153 / 186 >

この作品をシェア

pagetop