旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
第二十五話
「そんなちっぽけな剣で、俺たちに向かってくるとはな。俺たちも舐められたものだ」
 彼らはきれいな共通語を話している。訛りのない、流ちょうな大陸共通語だ。
「お前たち……トラゴスの者か?」
「御名答」
 三人がアーネストに向かってきた。アーネストも数歩前に進み、オレリアから少しだけ距離をとってから構える。
 一人目が剣を振り上げた隙に、短剣で相手の脇腹を刺す。
「くっ……」
「動きが大きい」
 すかさず二本目の短剣を取り出し、二人目を狙う。相手の剣先が真っ直ぐにアーネストに向かってきた。身体をひょいと横にずらし、今度は相手の大腿に短剣を突き刺す。
「いでぇ!」
「遅い」
 アーネストに刺された男たちは、それぞれ脇腹と大腿をおさえてうずくまった。男が手放した長剣を奪い取る。
 残るはあと一人。
 アーネストの動きに、オレリアも目を奪われていた。
 大きな身体をしなやかに動かし、みるみるうちに敵を倒していく。兵の訓練を見たことはあるが、こんなふうに実践を目にしたのは初めてである。地面の上には血だまりが広がっていくが、それが怖いともなんとも思わなかった。
 アーネストに夢中になっていた。人の気配を感じたときには、オレリアはすでに短剣の先を向けられていた。
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