旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 ひゃっと声をあげたときには、アーネストに力強く抱きしめられていた。大きな手は、オレリアの頬をやさしくなでる。
「俺の知らぬ間に、大人になったものだ。俺は、お前にずっと言えなかった。トラゴスの実情を……」
「それだって、アーネストさまがわたしを思ってくださってのこと」
「……すまなかった」
 アーネストは彼女の存在を確かめるかのようにして、顔を寄せる。
「オレリア……これからも俺の妻でいてもらえないだろうか……」
 二人は静かに唇を合わせる。風が吹き、オレリアのスカートの裾を弄んだ。
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