旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
第二十六話
 トラゴス国の現国王は、前マッシマ公爵である。公爵はその爵位を息子に譲り、本人は王の座に就いた。血の分けた兄弟の争いであるが、血を分けた仲だからこそ、彼は兄の悪政に耐えられなかったのだ。
 トラゴス国では十年以上もその悪政が続いたため財政難に陥っており、当時の国王はそれを認めようとはしなかった。金がなければ集めればいい。そう言って税金をひたすらあげる。それに反発する者たちが、武器をもって立ち上がり、トラゴス国内ではいたるところで争いが起こっていた。
 そこに国軍を投入して押さえ込み、見せしめに処刑する。
 だけど、そのような争いで疲弊するのはトラゴス国軍も同じ。そこで彼らが目をつけたのがハバリー国のスワン族であった。スワン族は戦闘部族であるため、気性が荒く争いを好む者が多い。前王はそれを利用したかったようだ。
 そしてスワン族のなかには、ハバリー国の国王にミルコ族が就いたことを、よく思っていない者たちも多かった。そういったスワン族とトラゴス国の前王が手を結んだことで、トラゴス国内の情勢はより悪化した。
 ハバリー国の国境の街、ガイロはスワン族が多く住む街である。しかしスワン族も二極化し、トラゴス国からの攻撃に備えるためにハバリー国軍が投入され、他の部族たちも多く住むようになる。彼らにもハバリー国を守りたいという気持ちがあったのだろう。
 国境では小競り合いが続き、トラゴス国内でも争いが続く。特にトラゴス国内の情勢は悪くなるばかりで、王弟でもあるマッシマ公爵を新しい王に、という話もちらほらと上がり始めた。
 もともと前王が王位につくときも兄か弟かと二つの派閥に別れ、弟が手を引いた形になったのは、無駄な争いをしたくなかったからだと、一部ではささやかれている。
 しかし、争いを避けた結果がこの状況となれば、マッシマ公爵も意を決したようだ。
 そして彼が目をつけたのがハバリー国であった。
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