旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 ハバリー国には、第二王女が嫁いでいる。それにもかかわらず、スワン族と手を結んだトラゴス国は何度も兵を挙げている。そこをうまく利用できないかと考えた。
 極秘裏にマッシマ公爵はハバリー国軍のアーネストと接触し、その二つは手を結ぶ。
 トラゴス国がハバリー国に攻め入ろうとしたのが何度目となるかわからないとき、その裏でマッシマ公爵がクーデターを起こした。手薄になった王城をマッシマ公爵が占拠する。
 すぐに国王と王太子は捕らえられ、地下牢へと繋がれた。
 そんな彼らを処刑したのは、アーネストである。それはマッシマ公爵からの指示であり、ハバリー国の闘神と呼ばれる力を見せしめるため。しかし、アーネストとしては命令に従っただけである。
 王と王太子はアーネストに向かって暴言を吐いたが、彼は表情を変えずに剣を振り下ろした。 
 それでも、彼らはオレリアの父であり兄だった。いくら国のためといえども、彼女の家族を殺した事実にかわりはない。それを知ればオレリアは悲しみ、アーネストを憎むだろう。
 その事実がアーネストを苦しめ、彼女と別れる決意を促した。憎んでくれるなら、それでかまわないと。嫌われるなら、それも本望。
 どちらにしろ、彼女が二十歳になったら、手放すつもりでいたのだ。彼女のためにも。
 しかし、オレリアはアーネストが予想していたものとまったく正反対の行動をしたのである。
 十二年間かけて、お互いの距離を遠ざけようとしていたのに。離縁届をつきつけて、さっさと別れようとしたのに。彼女と違う女性を抱いて、嫌われようとしたのに。
 それでも彼女はアーネストとの距離を縮め、別れないと宣言し、好きだと言った。
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