旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
第二十七話
 アーネストと共に暮らしてもずっと寝室を分けていたのは、アーネスト自身の気持ちの問題であった。
 オレリアはそれをなんとなく感じ取ってはいたが、長い間離れて暮らし、あのような形で再会を果たしたのであれば、その気持ちもわからないでもない。
 なんとか互いの気持ちをはっきりと口にしたおかげで、二人を分かつ理由などもう何もない。
 しかし、それまでに二人の仲がなかなか進展しなかったので、オレリアはマルガレットにも手紙で相談はしていた。
 毎年、アーネストが誕生日プレゼントだけは買ってあって、それを十一年分まとめて贈ってもらった、と報告したところ、「我が兄ながら、わけがわからない」と返事がきた。そのプレゼントの内容を目録のようにして書いてみたら「リボンとかアクセサリーはわかる。だけど、ドレスに下着って、欲望がダダ漏れよね? こういうのをむっつりっていうのよ」とまで書いてあった。
 マルガレットから見たアーネストはむっつりらしいが、オレリアから見ればアーネストの不器用な気持ちをぶつけられて、少しだけ心がくすぐったかった。

 ガイロにある邸宅。オレリアに与えられた部屋は、一人で使う分には十分に広い。寝台だって一人で寝るには広すぎるほどであるし、ソファも机も必要なものは置いてある。隣には衣装部屋があるけれど、そこを埋めるだけの衣装は持ち合わせていない。
 白い壁紙には小ぶりの花柄が描かれていて、汎用性のある模様でもある。この部屋は、オレリアのためだけに用意された部屋ではない。空いていて、使い勝手のいい部屋を与えられただけ。
 だからアーネストの部屋と扉一枚でつながっているわけでもない。
 それなのに今夜、彼はここに来ると言う。それが何を意味するのか、わからないほどの子どもの時期はとうに過ぎた。
 控え目に扉が叩かれる。
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