旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 二人でグラスを軽く合わせてから、オレリアは一口だけ飲んだ。
 口の中にふわっと甘い香りが広がり、後から酸味がきいてくる。喉を少しだけ刺激しながら、すとんと胃の中に落ちた。
「どうだ?」
「ちょっとだけ、口の中がピリピリしました」
 お腹の中がじんわりとあたたまってきて、頬も火照り始める。
「なるほど。お酒は飲めるが、強くはないようだな」
 アーネストの指が、朱に染まったオレリアの頬をなでながらも、視線は違うところを追っていた。
「……その服」
「アーネストさまからの贈り物にあったものです」
「そうか……」
「アーネストさまは、こういった服が好みなのですか?」
 襟にも袖にも、フリルがたくさんついた白のナイトドレスは、胸元をリボンで結ぶ形になっていた。
「お前に似合いそうかなと想っただけだ。不満か?」
「いえ……ですが。子どもっぽくないですか?」
「やっぱり、不満なんだな。他のを買ってやるから、今日はそれで我慢しろ」
 アーネストはグラスの残りを一気に飲み干した。
「さて。お前は、俺との子を望むと言ったな?」
「は、はい」
 オレリアの手の中にあったグラスは、アーネストの手によって奪われる。彼が残りを飲んでしまうと、オレリアをやさしく抱き上げた。
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