旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
エピローグ
 ハバリー国の十五周年記念式典には、大陸内の他の六つの国からも代表が集まる。
 オレリアはアーネストと共に式典へ参加するため、その一か月前には首都サランへと戻った。久しぶりのラフォン城、そして二人の新居となるはずだった離れの部屋。
 アーネストがオレリアを連れてダスティンたちの前に顔を出すと、デンスがオレリアの両手を力強く握りしめ「よかった、よかった」と泣き出した。
 もちろん、それに呆れたのはダスティンであるが、アーネストはぴしゃりとデンスの手をはねのけた。
「アーネスト。しばらく見ないうちに、器量の狭い男になったな」
「涙もろくなった族長だけには言われたくありませんね。いつまでオレリアに、義父(ちち)と呼ばせるつもりですか」
「ふん。そんなの、一生に決まっているだろうが」
 デンスとアーネストがにらみ合っている様子を、オレリアは隣でハラハラと見守っていたが、マルガレットに手を引かれて彼らに知られぬようにそこから離れる。
「あの人たちは放っておきましょう。それよりもあなたたちの話をいろいろと聞きたいのよ」
 マルガレットだけでなくシャトランも「そうよ」と頷くし、三人の子どもたちもオレリアの手を引きながら、サロンへ行こうと言う。
 子どもたちからすればアーネストは伯父にあたるが、これが初対面であるため、興味深く遠巻きに見ており、まだまだ警戒心も強そうである。
 アーネストとデンスのやりとりは続いていて、そこにダスティンも混ざって何がなんだかわけのわからない状態になっていた。オレリアは後ろ髪が引かれる思いをしながらも、子どもたちの誘いにのることにした。
 そうやって、感動の再会を果たしたものの、すぐに感動が薄れたのは、記念式典の準備に追われたからだろう。
 食事の最終確認やら、式典の手順などを儀典長と共に見直しをし、オレリアがどの場で通訳に入るのかなども、細かく決められた。
 さらにオレリアのドレスもああでもないこうでもないと、マルガレットが誰よりも気合いを入れていた。
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