旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
「い、いや……こっちこそ、そんな大事な日に遅くなってしまって悪かった。あ、体調は問題ないのか? 俺はどうしたらいいんだ? ダスティンたちも知っているのか?」
 急にあたふたとし始めたアーネストは、どこかかわいいと思う。
「今朝は体調がよいです。マルガレットさまとシャトランさまはご存知ですが、陛下とお義父さまには内緒にしておくようにとお願いしました」
 その二人に知られたら、間違いなくアーネストに伝わると思ったからだ。
 アーネストには、オレリアの口から伝えたかった。
「そ、そうか。嬉しいような、恥ずかしいような。なんとも不思議な気持ちだ。この年になって、父親になるとは思っていなかった」
「ですが。わたし、あのとき、はっきりと言いました。アーネストさまとの赤ちゃんがほしいって」
 それはそうだが……と、アーネストはまだ困惑しているようだった。
 オレリアだってその事実を知ったときには信じられなかったのだ。だからアーネストの気持ちもわからないのではないのだが。
「それよりもアーネストさま。昨日は遅くまでお仕事をされていたのですか? 戻ってきてからも机に向かっておりましたよね?」
「そ、それは……」
 またアーネストが慌て始めたところが怪しい。いったい、何をしていたというのか。オレリアが唇を尖らせて詰め寄ると、彼も観念したようだ。
 アーネストはオレリアにとことん弱い。
「お前に、離縁を申し出たことはあったが、求婚したことがなかったなと、そう思っただけだ。族長の集まりで、どのように求婚したかという話になってな……」
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