旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 そう思いつつも、手紙の一通も書けないほど忙しいのだろうかと、心の片隅では考えていた。
 だけどアーネストは、定期的にガイロの街の様子を報告してくる。その相手はもちろん、この国――ハバリー国の国王ダスティン。
 ハバリー国はダスティンとアーネストが中心となって建国された新しい国である。
 王となったダスティンが首都を中心に国をまとめ、アーネストは国境を守っていた。さまざまな民族が集まった多民族国家であるため、国内の統治が行き届いているとはまだまだ言いがたい。
 だからアーネストは、オレリアをガイロの街へ連れていくのは危険であると言い、彼女をダスティンとマルガレットに預けて、部下と共にガイロの街に滞在しているのだ。
 アーネストは、ガイロを拠点とし国内のあらゆる場所へと足を向けているようだが、いつ、どこへ、何をしに行っているのか。オレリアにはさっぱりとわからなかった。それゆえ、いつ、彼が首都に戻ってくるのかも。
「オレリアも二十歳になったから、兄さんからのお祝いの言葉ではないのかしら?」
 ハバリー国では十八歳で成人とみなされる。だけど年齢の十の位が一つ上がるのは、特別感があふれる年齢でもある。
「そうだといいのですが……」
 呟いたオレリアであるが、彼女もそうであってほしいと願っていた。
 アーネストが誕生日と年齢を覚えていた事実だけで、胸が張り裂けそうなほどの喜びに包まれる。
「オレリアが二十歳になったのであれば、兄さんも四十ね」
 ふふっと、マルガレットはいたずらっこのように笑った。やはり、年齢の十の位が一つ上がるのは、別格のようだ。
「はやいものね。オレリアがここに来て、もう十二年も経つのね」
 マルガレットの言うように、オレリアがトラゴス大国からハバリー国に嫁いで、十二年になる。
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