旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 ラフォン城は、石造りの年代を感じさせる城であった。緑色の蔦が城を守るかのようにして絡みつき、青い尖塔は空に向かって真っ直ぐ伸びていた。天気の良い日はその青が空に溶け込んでしまうだろう。
「古い城だが、その分、造りはしっかりとしているし、中も快適で過ごしやすいはずだ」
 オレリアが案内されたのは、王城の本館と回廊でつながっている離れの館であった。
「ここが、陛下が俺たちのために整えてくれた部屋だ。だが、俺はまだ向こうで寝泊まりをする。やることが多くてな」
「……はい」
 アーネストの顔を見上げて、すぐに視線を逸らす。
 彼は、花嫁がオレリアでがっかりしているのだ。誰だって、がっかりする。何よりもオレリアはまだ子ども。
 彼のような立派な男の花嫁が、たった八歳の子どもなのだ。
 誰がどうみたって、おかしな話である。
「わたしのような者で、申し訳ありません……」
 くしゃりと、頭を大きな手がなでた。
「俺もお前には聞きたいことがたくさんある。だが今は、それを問いただすつもりはない。とにかく、ゆっくり休んでくれ……メーラ殿……」
「は、はい……」
「俺の花嫁を、よろしく頼む。俺は、本館のほうにいる。用があるなら遠慮なく来てもらってかまわない。夕食はダスティン……陛下たちと一緒にとることになるが、それは問題ないか?」
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