旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
「はい……閣下のお言葉に従います」
 また、アーネストは怪訝そうに眉根を寄せてから、静かに部屋を出ていった。
 扉が閉まるのを見届けてから、オレリアは肩を大きく上下させた。
「……はぁ。緊張したわ……」
「立派でしたよ、オレリア様」
 メーラの言葉で、オレリアの気持ちもふと緩む。
「閣下はお優しい方でしたね」
 それはアーネストが大人だからだ。きっと彼は姉のミレイアが来ると思っていたのだろう。だから、花嫁の年を十八歳と言ってみたり、メーラを花嫁と勘違いしてみたり。
 オレリアが望まれていないことなど、一目瞭然だった。だけど、この結婚をないものにはできない。
「メーラ。そういえば、閣下のお年は、いくつだったかしら?」
「……そうですね。確か、今年で二十八歳になられたかと……」
 オレリアとは二十歳も年の差がある。誰が見てもふざけた結婚だ。そしてこのふざけた結婚を考えたのは、トラゴス国王に間違いないだろう。ずっとそんな思いはしていたのだが、アーネストとのやりとりで、それは確信にかわった。
 そこで、扉が叩かれた。返事をすれば、嫁入りの荷物が次から次へとやってくる。それでも、一国の王女の嫁入りのわりには荷物は少ないかもしれない。普段着る用のドレスが数着とナイトドレス、そして純白のウェディングドレス。
 あの父王のことだから、ウェディングドレスの準備さえ渋るかと思ったが、こうして与えてくれたことには感謝しかない。
『ふん。古くさいこのドレスでも持っていくがいい』
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