旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 オレリアがはっきりとした口調で言うと、「承知した」とアーネストが明るく答える。たったそれだけなのに、心が軽くなった気がした。
「だったら、俺のこともアーネストと呼べ。俺も閣下と呼ばれるのは好きではない」
 アーネストは、オレリアの手をぐっと握りしめた。
「では、食堂に案内する」
「オレリア様をよろしくお願いします」
「ああ。メーラ殿には、部屋に食事を運ばせる」
 オレリアはアーネストに手を引かれて、食堂へと向かう。すれ違う者たちが、興味深そうにオレリアに視線を向けてくる。だけどアーネストが、その視線からオレリアを隠すかのようにしながら隣に立つ。
「オレリアはこの結婚をどう思っている?」
「どう、と言うのは?」
「知っての通り、俺はオレリアよりも二十歳も年上だ」
「はい」
「オレリアが望むならば、この結婚をなかったことにしてもいい」
 ズキリと胸が痛んだ。やはり、オレリアではアーネストの相手として相応しくないのだ。
「それがアーネストさまの……いえ、このハバリー国の望みですか?」
「……いや。俺たちはこの結婚を断れない。断ればどうなるか、わかっているからな。だが花嫁として差し出されたのが、オレリアのように幼い娘であれば、話は別だ」
 彼は苦しそうに言った。歩調が少しだけ遅くなる。
「わたしでは、アーネストさまの花嫁に相応しくないと?」
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