旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
「……ちがう」
 彼がオレリアのことを慮っているのはひしひしと感じ取れた。だけど、この結婚が駄目になったところで、オレリアに戻る場所などない。まして、行く場所もない。
「わたしは、トラゴスの王女としてハバリー国に嫁ぐのです。その意味を、アーネストさまもおわかりかと」
「……すまなかった。今のお前に聞く話ではなかったな。だが、きっと今から同じことを問われる」
「はい……覚悟はできております。きっと陛下も、ミレイアお姉様がここに来られると思っていたのでしょうね」
 オレリアは自嘲気味に笑う。
 食堂に入るなり、オレリアは挨拶をした。
 顔をあげた先には、驚いた表情を浮かべる大人が四人いる。先にアーネストから話を聞いていたから、そこに誰がいるかを瞬時に悟った。
 壮年の男性は、ミルコ族の族長だった男で国王の父親。となれば、その隣にいるのが族長の妻である女性。
 そして、長い黒髪の男性がハバリー国の国王。隣にいるのが王妃で、彼女はアーネストの妹と聞いている。
「お待たせして申し訳ございません」
「それほどかしこまる必要はない。席につきなさい」
 穏やかな笑みを浮かべて国王は口にするが、その視線からは警戒心が漂う。
 料理が運ばれてきて、食事が始まった。静かな晩餐。
 テーブルの上には、肉料理やらサラダやらが大きな皿に並べてある。それを自分たちが好きに取るようだ。
 オレリアが知っている晩餐は、一人一人に料理が運ばれてくるもの。このように、大皿から料理を取り分けるというのは、プレール侯爵夫人の教えになかった。
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