旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 背筋を伸ばして歩いて、離れの部屋へと向かうが、こそこそと何かささやくような声がオレリアの耳に届く。
 食堂へ向かうときには気にならなかったのに、今になって異様にそれが気になった。
(あぁ……アーネストさまが……)
 先ほどは、彼がオレリアを興味の視線から隠してくれていた。
 それに気づいたとき、オレリアの心の中でアーネストの存在が大きくなった。
 部屋に戻ると、驚いた様子でメーラが出迎えた。
「これほど早くお戻りになるとは思ってもおりませんでした」
「やはり、わたしでは駄目なのよ。おかしいでしょう? アーネストさまと結婚だなんて」 
 気丈に振る舞っていたが、メーラの顔を見た途端、一気に涙がこぼれてきた。
「オレリア様、泣かないでください。少なくとも、アーネスト様はオレリア様の味方でございますよ」
 おそらくそうだろう。いや、そうであってもらいたい。
 このふざけた結婚の一番の被害者はアーネストであるはずなのに、それでもオレリアの味方であってほしいと願っていた。
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