旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
「閣下。このような時間にどうされましたか?」
 姿を現したのはメーラである。オレリアが連れてきた唯一の人物。トラゴス国のことだから、使用人をぞろぞろと連れてくるだろうと思っていたから、それがたったの一人というのも意外だった。
「オレリアの様子を見に来たのだが、迷惑だったろうか?」
「いえ、めっそうもございません。ですが、閣下は他の部屋でおやすみになられると聞いておりましたので……失礼しました」
 部屋に入ると、薄暗かった。ただ、奥の部屋の一角だけが明るく、そこにオレリアがいるのだろうと予想がついた。
「……オレリア」
「アーネストさま?」
 すでに着替えていたオレリアは、薄紅色のゆったりとしたドレスを着ていた。先ほどは結い上げられていた髪もほどかれ、三つ編みにして前に垂らしている。
「どうされたのですか?」
「夫が妻に会いにくるのに、理由がなければいけないのか?」
 メーラがすっと姿を消した気配を感じ取った。彼女はよくできた侍女のようだ。
「……ですが、わたしたちはまだ結婚をしておりません」
「結婚を前提に、お前はここへ来たのだろう?」
 オレリアの隣に、腰をおろす。
「だったら、何も問題はない。それに、お前をトラゴスに追い返すようなこともしない」
 彼女の大人びた表情が、ゆっくりと崩れていった。
「俺は、お前を守るから、安心してほしい」
「守る? いったい何から?」
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