旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 そんなやりとりを、オレリアは身体を小さくしながら眺めていた。
 少なくともダスティンはオレリアの味方である。いや、アーネストの味方なのだ。そして他の部族は、この結婚を認めたくないようだ。
 そうやって周囲を観察しながら、オレリアは皿の上に並べられた料理をゆっくりと食べていたが、アーネストが「そろそろ」と声をかけてきた。
「俺たちは先にここを出るんだ。あとは放っておいていい。勝手に食べて飲んで、朝まで騒ぐだけだ」
 新婚の二人が先に席を立つのは、これから二人で迎える初めての夜のためだと、昨日、マルガレットが教えてくれた。初めて顔を合わせてから、結婚式の準備を手伝ってくれたのも彼女だった。今年、二十歳になった彼女は、ダスティンとは二年前に結婚したらしい。王妃であるのに率先して動くのは、やはりミルコ族の血筋なのだろう。
「では、俺たちは先に失礼する」
「ひゃっ……」
 急にアーネストがオレリアを抱き上げたものだから、小さく悲鳴をあげてしまった。それをニヤニヤとしながら見守っている者もいる。
「仲がよくてうらやましいですな」
「見た目だけは十分にかわいらしい花嫁だ」
 食堂を出る二人の背に、そのような声が届いてきたが、アーネストはそれを無視して食堂を出た。
 薄暗い回廊を、オレリアは彼に抱かれたまま移動する。自分で歩けると口にしたが、アーネストは彼女を下ろす気はないようだ。
< 46 / 186 >

この作品をシェア

pagetop