旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
「オレリア。多分、お義父様は、他の呼び方を期待しているのよ」
 隣に座っているマルガレットは上品に笑う。
「他の呼び方、ですか?」
 オレリアは困って、首をコテンと横に傾げた。他の呼び方。名前で呼ぶしか思い浮かばない。
「名前で呼んでもよろしいのですか?」
 そう尋ねると、ちょっとだけデンスの縦筋がやわらいだものの、難しい顔から変化はない。ということは、名前で呼ぶは不正解。
「親父。オレリア相手に大人げない。そうやって彼女をいじめるのはやめてくれ。私がアーネストに叱られる」
「いじめてはいない。これはクイズだ」
「クイズ?」
 デンスはオレリアからなんと呼ばれたいのでしょうか?
 そういうクイズだろうか。
「だったら、ヒントを出してやれよ。もしくは、親父がどう呼ばれたいか、さっさと答えを言えばいいだろう?」
「すぐに答えを言ったら面白くない。これは、儂とオレリアの仲を深めるための儀式だ」
「あらあら、あなたったら」
 シャトランも楽しそうに目を細める。
「わかった。オレリアにヒントを出そう。アーネストから聞いたか? アーネストは、儂が育てたようなものだ。あいつの父親は、あいつが生まれてすぐに部族間のいざこざに巻き込まれて亡くなってしまったからな。あれの母親には悪いことをした。だから、アーネストをこちらで責任を持って育てたいと、そう申し出たのだ」
< 51 / 186 >

この作品をシェア

pagetop