旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
「やぁねぇ。この人、本当に素直じゃないの。ごめんなさいね、オレリア」
 いえ、とオレリアは小さく首を振る。だけど、心には花が咲いたようにぽっとあたたかくなった。
 それから、オレリアはデンスを『お義父さま』と呼ぶのだが、オレリアがそう呼ぶたびにデンスの顔が気持ち悪いくらいに崩れると、ダスティンは言っていた。
 そしてオレリアは、ガイロの街へいるアーネストに手紙を書いた。会えないのであれば、やはり手紙くらいで近況を知らせたい。
 後見人となったデンスが、オレリアから「お義父さま」と呼ばれたがっていたことを書いてみた。だけど、これでは自惚れになってしまうだろうかと思い、メーラに相談する。
「気にする必要はないと思いますよ。オレリア様がどう思ったかを素直に書けば、閣下も喜ばれると思います」
「そうなの?」
 考えてみたら誰かに手紙を書くのも初めてのこと。うまく書けたかどうかはわからない。だけど、メーラの言葉を信じて、オレリアが思ったことを素直に書いた。
 だけど、いつまで待ってもアーネストからの返事はこなかった。

 アーネストと結婚して一年が経った。オレリアは九歳になった。この一年間、オレリアはハバリー国の国民としての振舞い方を学んだ。
 特にミルコ族は、アーネストが言っていたように、自分のことは自分でやるというのが基本精神である。
 それから、もう一つ。ミルコ族の伝統を教えてもらった。それは王妃となったマルガレットも例外ではなく、国王のダスティンもそれに則っている。
< 53 / 186 >

この作品をシェア

pagetop