旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 そこから、オレリアが挨拶の仕方やダンス、作法や外国語などを教えるようになったし、たまに通訳として外交の場にダスティンやマルガレットの近くに立つこともある。プレール侯爵夫人から厳しく教え込まれた内容が、今になって役に立ったのだ。厳しかったプレール侯爵夫人だが、このときばかりは感謝した。
 マルガレットたちの教師役になったこと、外交の場で通訳を務めていることを、アーネストへ手紙で伝えた。やはり、彼からの返事はこなかった。
 オレリアもわかって手紙を書いているのだ。彼からの返事はこない。だけど、手紙を書いて伝えたいという、一方的な気持ちの押しつけでもある。
 もしかして、アーネストは手紙を読んでいないかもしれない。もしかしたら、手紙が届いていないのかもしれない。
 それでもかまわなかった。アーネストに伝えたいことを文字にするだけで、彼と話をしたような気分になるからだ。
 また一年が経つと、ダスティンとマルガレットの間に女の子が生まれた。それから一年後には男の子が生まれた。
 そうやって月日は流れていき、オレリアも十八歳となり成人を迎えた。この年の大きな変化は、デンスが後見人から外れたことだろう。
 それでもオレリアは、アーネストには毎月のように手紙を書き、近況を知らせていた。
 ダスティンとマルガレットの子どもたちの教育係として、礼儀作法や外国語を教えることになったとか。デンスの誕生日にシャトランと一緒に料理を振る舞ったら、泣くほど喜んでくれたとか。メーラがラフォン城で働いていた料理人と結婚をしたとか。
 それでもアーネストからの返事は届かなかった。
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