旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 それからもう一つ。オレリアが成人を迎えてから聞こえるようになったのは、オレリアの再婚の話である。しかしオレリアはアーネストとの婚姻関係を解消していない。そういった話がオレリアの耳に届いたときには、デンスやシャトランが一喝していたが、それでも噂というのはさまざまな人を介して届いてくるもの。
 そういった話が聞こえてきた不安を、アーネストの手紙にしたためた。
 だけどもちろん、返事はこなかった。
 そしてオレリアがラフォン城にやってきてから十二年が経ち、オレリアも二十歳となった。
 二十歳の誕生日を五日過ぎたときに、アーネストから初めての手紙が届いたのだ。
 マルガレットも見守る中、気持ちを高まらせたまま手紙を開けると、そこには疑いたくなる言葉が書かれていた。
 ――離縁してください。
 ご丁寧に離縁届の書類まで同封されていて、アーネストの名はしっかりと直筆で書かれていた。
「はぁ? 兄さんたら、何を考えているの? ちょっと待ってなさい、オレリア。今、ダスティンとお義父様たちを呼んでくるから」
 アーネストから届いた手紙と書類を手にしたマルガレットは、目をつり上げながら部屋を出ていった。ドタドタと乱暴に立ち去っていく足音が、扉越しに聞こえてきた。
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