旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 痛む胸を押さえるかのようにして、オレリアは心の底から気持ちを吐き出した。
 仮にアーネストが他に好きな女性ができたとしても、一方的に手紙で別れを告げられただけでは納得できない。
 はっきりと彼の口から、その事実を聞きたい。
「わかったわ、オレリア。ガイロの街にいきましょう!」
 マルガレットの明るい声に、みんなの注目が集まった。
「え?」
 驚きのあまり、オレリアの涙がピタリと止まる。
「だが、あのアーネストだぞ? オレリアが行ったところで、素直に会うと思うか? 会いたくないから、こうやって手紙を一方的に送ってきたのだろ?」
「そうね。兄さんのことだから、正攻法でいけば絶対に逃げる。会わずにオレリアと別れるつもりよ。それってね、ようは会ったら別れられないと思っているからでしょ?」
 マルガレットの言葉は、オレリアにとっても意外なものであった。
 会ったら別れられない。だから、会わない。
「オレリアがオレリアだと気づかれないようにして、兄さんの様子を見に行けばいいわ」
「そんなこと、できるわけ……あ、できるか?」
 ダスティンにもその案に心当たりがあるようだ。まさかオレリアに斥候の真似事をしろとでも言うのだろうか。
「オレリア。ガイロにはね、兵士や街の人たちが利用できる大きな食堂があるの」
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