旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 気は急いたが、時間も時間。オレリアのことも気になっていたし、夜が明けてから出立した。
 アーネストの動きが早かったせいか、ガイロに攻め入ろうとしていたトラゴス国は撤退したらしい。
 トラゴス国内だってごたごたしているのに、ガイロを狙ったのは、やはりオレリアを嫁がせたのが理由だろう。彼女をハバリー国に捧げ、隙を作る。ハバリー国を味方にするのではなく、潰す選択をしたようだ。
 だが、これでアーネストはガイロから動けなくなった。
 いつ攻め入ってくるかわからないトラゴス国と、そちらへ寝返ろうとしているスワン族。二つの動きから、このガイロの街を守らなければならない。
 そんななか、オレリアからの手紙が届いた。幼いながらも丁寧に書かれた手紙を読むだけで、緊迫した気持ちが緩んでいく。
 返事を書こうと思った。だけど、やめた。
 彼女を守ると言っておきながら、側にいることができない。守れないのであれば、突き放すのも一つ。
 いや、アーネストがオレリアを大事にしていると周囲に思われてはならない。そうすれば、彼女が狙われるからだ。家族や恋人を狙うのは、彼らの常套手段でもある。
 だから彼女を守るために突き放すしかない。けれども返事だけは書いてみた。出せない手紙を彼女に宛てて書く。
 そうこうしているうちに、彼女から二通目の手紙が届いた。そして、三通、四通と、アーネストが返事を出さなくても届く。
 いつしかそれが当たり前となり、彼女からの手紙がアーネストの楽しみにもなった。
 しかし絶対に返事は出さない。書くけど、出さない。
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