旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
第十一話
 鏡に映る自分の顔を見る。襟足の長くなった青鈍の髪には、たまに白いものが混じるようになった。それを見つけたときには抜いている。
 ――ブチッ。
 先日、オレリアに手紙を送ってから返事がこない。返事がこないというのが、これほど不安なものであるとは知らなかった。もしかしたら、彼女もこんな気持ちになっていたのだろうか。
「閣下。お昼ご飯の時間です。食堂に行きますよ」
「お前か」
 珍しく、ジョアンが食事に誘ってきた。
「だって、僕が誘わないと、閣下は食事に行く気がないですよね。今だって、行こうとはしてませんでしたよね? そして僕から逃げようとしてますよね? それよりも、きちんとご飯を食べてます? お酒ばっか飲んでません?」
 副官よりも母親の称号をあげたいくらいだ。だが、こんな年下で口うるさい母親はいらない。
「うるさい」
「そうやって人の話を聞こうとしないってことは、図星ですね。って閣下、どうしちゃったんです? ここ最近、変ですよ? せっかくトラゴス国とスワン族のことが落ち着いたというのに」
「うるさい」
「はいはい。閣下はいつまでたっても大人げないですよね。僕のほうが大人じゃない?」
 ジョアンとの会話は疲れる。だけど、気が紛れるのも事実。
「そういえば、閣下。知ってます?」
「何が、だ」
< 70 / 186 >

この作品をシェア

pagetop