旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 それがけじめのつもりだった。
 ダスティンからの報告書によると、アーネストと別れて他の者と再婚させろという意見が、他の族長からもあがってきているらしい。特に、オレリアと同じ年代の息子を持つ族長たちがうるさいらしい。オレリアの手紙にもそれをにおわす文章が書いてあった。だけど彼女は、その縁談を受ける気がないようなのは、手紙から感じ取れた。自惚れかもしれないが。
 国王夫妻ともっとも親しい女性。それがオレリアであり、彼女は今、ダスティンたちの子の家庭教師を務めている。また、他国との社交の場にも立ち会い、マルガレットをさりげなく助けていたとか。そのようなことがダスティンの手紙に書かれていた。
 彼女には彼女にふさわしい相手がいる。
 そう思っているのに、彼女を手放したくないと、心の底では訴えている。
 オレリアの幸せを願うなら別れるべき。だけど――
 そんな葛藤があり、あれからアーネストは酒に逃げるようになった。
「あ。やっぱり、この時間だと空いてますね」
 昼食には少し遅い時間。ジョアンのことだから、わざとこの時間帯を狙って誘ってきたような気がする。
 食堂は、誰でも利用することができる。ハバリー国の軍の拠点とする建物の前に別の建物があって、それが食堂なのだ。二つの建物は回廊でつながっているが、軍専用の食堂というわけでもなく、ガイロの街に住む者、訪れた者などが自由に利用できるようになっている。そのため、時間帯によってはものすごく込む。
 ジョアンとアーネストが席につくと、給仕の女性がやってきた。
「やった。今日はリリーさんだ」
 子どものようにはしゃぐジョアンを見て、彼女がジョアンの想い人なのだろうと察した。
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