旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 自然と顔がにやけてくる。嬉しくて、涙までこぼれそうになる。
「エミさん、エミさん、どうしましょう。あ、注文です。おすすめ二つです」
「はい、おすすめ二つね。って、どうしたの? リリー」
「アーネストさまが、いらしてくれました」
「あらあら……」
 エミは食堂で働く女性をとりまとめている中心的人物で、オレリアの事情も知っている。ダスティンが協力を頼んだのが彼女なのだ。
「よかったわね、リリー。さ、さ。泣くんじゃないよ。まずは、料理をしっかりと食べてもらおうね。この日のために、あんたもせっせと料理をしていたんだろ?」
「……はい」
 オレリアは食堂で主に給仕を担当していたが、それ以外にも料理を担当することもあった。
 トレイの上に用意された料理を並べていく。パンにスープ、それからメインの肉料理。
 訓練などでお腹を空かせた兵士たちのために、お昼はお腹にたまるものを準備している。それから付け合わせの小皿の料理。
 今日の付け合わせは、ミルコ族に伝わる野菜料理。これは、オレリアがシャトランから教えてもらった料理でもある。
 ――アーネストはね、昔からこれが好きだったのよ。お肉ばかり食べる子だったんだけど、この料理であれば野菜も食べられるって。
 シャトランには感謝しかない。
 トレイに料理を並べ終えたオレリアは、それをワゴンの上にのせた。ワゴンを押して、先ほどの席に向かう。
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