旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 オレリアがガイロの街へやってきたのは、十日ほど前。
 ダスティンの動きは早かった。すぐさまガイロの食堂で働いているエミに連絡をいれ、オレリアの状況を伝えた。
 エミは、最近、食堂でアーネストの姿を見ていないことに気づき、そこでピンとくるものがあったらしい。物事にも動じず、肉体的にも精神的にもしっかりとしているエミだから、何かを察したのだろう。むしろ、オレリアを応援したくなったようだ。いや、オレリアとアーネストの仲を。
 オレリアは食堂の仕事にはすぐに慣れた。というのも、いつかはアーネストに食べてもらいたいという思いもあって、シャトランからしっかりと料理を学んでいたからだ。そんな健気なオレリアを、エミはすっかりと気に入った。
 さらにエミは、十二年前のガイロがどんな様子であったのかも教えてくれた。それが、アーネストがガイロに滞在するようになった理由なのだ。
 オレリアがハバリー国に来たときにも、ガイロの街で休んだのを覚えている。休んだ場所は、軍が拠点としている建物で、そこに今、アーネストがいる。
 オレリアが足を運んだときには、ガイロの街もそれほどピリピリしていなかったし、オレリアに危険が差し迫るといった様子もなかった。
 それなのに、二人が結婚式を挙げた日を境にして、状況がかわった。
 トラゴス国がガイロの街へ向かって兵を挙げたらしい。
 あのとき、アーネストは間違いなくその話を聞いたのだ。だからすぐにガイロへと向かった。
 それ以降も、トラゴス国はガイロを狙い、スワン族の一部と接触していたようだが、それでも数ヶ月前に落ち着いたのは、ダスティンも言っていたようにトラゴス国の国王がかわったためである。
 だけど今の国王は、オレリアの兄ではない。
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