旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
第十三話
 アーネストは久しぶりに食堂で食事をしたが、懐かしい味がした。
 あれはミルコ族の伝統的な野菜料理である。それをガイロの食堂で味わえるとは予想外だった。
 それだけ、部族間の壁がなくなってきたのだろう。喜ばしいことだ。
「閣下。やっとまともにご飯を食べるようになりましたね。僕が誘った甲斐があったというものですよ」
 相変わらずジョアンは調子がよい。
 だけど、ジョアンに誘われてからというもの、アーネストは食堂へ足を向けるようになった。
 オレリアのことは気になりつつも、返事がこないのだから進展はない。ダスティンに探りをいれてみたが、完全に無視をされている。先に、ダスティンに根回ししておくべきだったと、後悔した。
 しかしダスティンも、オレリアのこと以外は事細かに教えてくれる。首都の様子はもちろんのこと、王子のこととか王女のこととか、ただの子ども自慢になっているともいう。
 それでも、オレリアについてだけは、まったく回答がない。彼女からも連絡がない。
 結婚したというのに、手紙も贈り物も届かなかったら、誰だって愛想を尽かすにちがいない。だからすぐに離縁に応じると思っていたのだ。
(これでは、オレリアの次の相手が決まらないのでは?)
 一夫多妻が認められていなければ、一妻多夫も認められていない。オレリアはアーネストと別れない限り、次の相手と結ばれることはないのだ。
 だから今、アーネストがオレリアを縛り付けている形になる。
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