旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
「……あ、ここです。今日は送ってくださってありがとうございます」
 彼女がぺこっと頭を下げると、おさげがふわりと動いた。ランタンの光でぼんやり橙色にとうつる彼女の姿に、なぜか心が揺さぶられる。
「クワイン将軍も、お気をつけて」
 家の中に消える彼女の姿を見送ってから、アーネストは来た道を戻る。ランタンを借りたままだったことに気づいた。これは明日、食堂に行ったときに返せばいいだろう。
 ただそれよりも、足音はしないのに近くに誰かがいる気配がした。それは、広場で彼女と会ったときから感じた気配。
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