旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
第十四話
 オレリアからの返事はまだ届かない。手紙を送ってから、一か月以上も経っている。ダスティンに探りを入れても、探りにならない。やはり、首都まで行くべきか。だけど、オレリアには会いたくなかった。
「……閣下、閣下」
「なんだ?」
「どうしました? ぼんやりして……最近、ひどいですよ? もしかして、平和ボケ? とうとうボケた?」
 平和ボケと言われればそうなのかもしれない。だが、まだまだ油断はできない。
「お前……最近、調子にのってないか?」
 腹の底から響くほどの低い声とともに睨みつけると、ジョアンはぽっと表情を明るくする。
「それ、それですよ。それ。やっぱり、閣下はそうでなくちゃ」
 ジョアンは嬉しそうにパンにかじりついた。
 実際、食堂で食事を取るようになってからは、鬱々とした気分が薄れていった。オレリアのことはもちろん気になりつつも、ここは相手の出方を待つべきと、腹をくくった。ただ、婚姻状態にある間は、オレリアは新しい相手と結ばれることはない。それだけが気がかりである。
「リリーさんといえば、僕、見ちゃったんですよね」
 なぜかアーネストは、ドキリとした。もしかして彼女を送ったあの日、ジョアンに見られたのだろうか。あの気配はジョアンのものだったのか。
 いや、何も悪いことはしていない。あんな夜遅い時間帯に、女性を一人歩かせるほうが危険なのだ。だからそれを見守っただけ。
< 89 / 186 >

この作品をシェア

pagetop