旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
「だから、そこに書いてあるだろう? 側妃にと」
 トラゴス大国は、ハバリー国に王女を嫁がせたいと言ってきたのだ。ただ、さすがにダスティンに妃がいるのを知っていたようで、王女を側妃にと打診してきた。
「なんなんだよ、この嫁の押し売りは。だがハバリー国は、一夫多妻を認めていない。それは、国王の私だって同じだ」
 国王というのは名ばかりで、この国の代表のような存在だからだ。
「だったら、それを理由に断ればいいだろう」
 淡々と言葉を放つアーネストであるが、彼だってこの話を断ったときの危険性を知っている。
「今、トラゴス大国が攻めてきたら、勝算は?」
 断るというのは、すなわちそういうこと。
「五分五分だな。ガイロの街がアレだからな。あそこの動き次第では負ける」
「うぅ~ん」
 腕を組んで、ダスティンは唸るしかできない。
「こういうときこそ、族長に相談か?」
 アーネストは藁にもすがる思いで、そう言った。その藁が族長と呼んでいる男――ダスティンの父親になる。だけど、この藁にはすがってはならないという気持ちもあった。
 とにかく、嫌な予感がする。だけど、ダスティンがこの話を受け入れられない以上、族長に相談するのが妥当である。
 ダスティンの父親は、古城の三階の奥の部屋にいる。もしくは、厩舎にいることが多い。
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