旦那さま、お会いできて光栄です~12年間放置された妻ですが、絶対に離縁はいたしません!
 だからすぐに彼らに捕まった。
『……きゃっ』
 壁に追いやられて、声を出せないようにと口を押さえられる。
『……やっ……んっ』
 男たちの気持ち悪い手が、オレリアの身体中をなで回す。
『おぉ。ほんと、いい身体してやがる。俺、勃ってきちまった』
 足のない虫が身体中を這い回っているような感じだった。ぞわぞわとした感覚は、プレール侯爵夫人から鞭で打たれたほうがマシだと思えるくらい。
 ガクガクと足が震える。
 怖い、怖い、怖い――。
『何をしている』
 涙で視界がぼやけていても、声だけで誰が来てくれたかだなんてすぐにわかった。
 ガイロに来てからは、数回しかやりとりをしたことがない。それも客と給仕という関係であるけれど。
 身体に衝撃が走って、倒れそうになった。それを支えてくれたのがアーネストだ。
 あの男たちを取り逃がしたと彼は悔しそうに口にしたが、あんな男を追いかけるのであれば側にいてほしかった。だけど、今のオレリアはオレリアでなく食堂で働くリリーである。
 あの後、家まで送ると言われたときも、それを断った。
 アーネストとリリーの関係は客人と給仕。
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