恋の障壁は0.1㌧!〜痩せたら大好きな彼に復讐しようと思ってました、だがしかし〜

7.

「とりあえず、オフィスの鍵にタイムカード兼用の社員証。それと、携帯とノーパソを貸し出すね。あと、出船さんの名刺も刷っておいた」
 
 ほ、本格的&仕事早いな!
 人生初名刺を渡されて、有頂天になる。

【 VR医療サポートシステム 現(うつつ)
 マネジメント担当 出船 優希】
 
 名刺に記載されている住所を見て、ギョッとした。
 
「出船さん、どうかした?」
「……一等地、でスネ?」
 
 札幌でのオフィスの一等地といえば西十一丁目界隈をさす。
 志望していた会社のうち、何社か十一丁目に所在あったけど、超一流企業ばっかりでした!
 
「うん、東西線西十一丁目駅から徒歩五分かからない。いいでしょ」
 
 深山君が得意そうに言う。
 いいけども。

「家賃。お、高いのでは?」

 おそるおそる問えば。そうかな? そうかも、と二人は平然と話す。
 
「大丈夫だよ、出船さん。二人とも株やってて、それなりの資金はあるから」
 
 安心するよりも驚いてしまった。
 
「二人とも、スーパーすぎない……?」
 
 チャレンジャーというよりはむしろ成功者。

「『ハッタリも芸のうち』って誠司が言い出してさ」
 
 ようはベンチャー企業で、信用はゼロ。
 なので、あえて一等地に居を構えることで『現金(キャッシュ)あります』感を演出してのことだという。
 深山君のオーダースーツもその一環なのだとか。な、生々しいな!
 
「武尊だってノリノリだったくせに。まあ、手狭になったら大学近くのテナントを探そうとは思ってる」
 
 いや、あなたがたの大学の近くも、絶対にお高いですから!
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