恋の障壁は0.1㌧!〜痩せたら大好きな彼に復讐しようと思ってました、だがしかし〜
回想②〜二十二歳、苦い出来事〜

1.

 武尊との旅行の一日前。
 一人の女性がオフィスをいきなり訪ねてきた。
 美人で、スレンダーで。ブランド物の洋服を、なんなく着こなしているエレガントな人だった。
 
 この人を知っている。
 
 彼女は、我が社と業務提携についての話し合いがなされている医療メーカーで、社長の秘書をしている人だ。
 
 彼女は社長の一人娘だと名乗った。
 応接室でお茶を出しながら彼女に問う。

「あいにく、本日は深山も森も出社していないのですが、どのようなご用事でしょうか?」

 今日、来訪予定があるなんて二人から訊いていない。
 
「知っています。今日はデブネさんに用事があったんです」
 
「私に?」
 
 なんだろう。まったく見当がつかない。私はとりあえず、彼女の前に座った。
 
 ……それと。この人、間違えている。
 私の苗字は「でふね」と濁らないのだ。
 初対面で名刺を渡すとほぼ百パーセント、体型から『デブネ』と呼ばれたりするから、仕方ないか。
 そんなことを考えていると。
 
「深山さんと別れてください」
 
 女性はキッパリと言った。
 
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