恋の障壁は0.1㌧!〜痩せたら大好きな彼に復讐しようと思ってました、だがしかし〜

2.

「え?」
 
 曰く。女性は、ある経済誌に載った『ヤングエグゼィティブ』に惹かれた。
 彼女は、メーカー社長の父親に自分の結婚候補として、その人物である深山武尊を売り込んだと言う。
 
「私は深山さんに、結婚を前提としたお付き合いを申し込む予定でいます」
 
 ドキドキと、心臓が煩い。
 
「彼が了承してくれれば、御社との業務提携について、父から約束を取り付けてあります」
 
 つまり、それって。
 ゴクリと私の喉が勝手に鳴る。
 
「わかりますよね? 深山さんにあなたは必要ないってこと」
 
 女性は勝ち誇った顔になった。
 
「……私は……」
 
 資料作成できるし、飯スタントもできるし。
 心の中で必死に対抗していると、女性から蔑みの視線を投げられた。
 
「あなたが深山さんの側にいて、どれだけの売り上げを出せるんですか? 生み出せないですよね」
 
「でも私と彼は、恋人同士です!」
 
 必死だった。
 なんで、私の恋人を取ろうとするの。あなたは美人なんだから、別の人を探せばいいじゃない。
 
 く、と彼女は嘲笑った。
 
「彼に本気で愛されていると思ってるんですか?」
 
 意味がわからない。
 
「深山さんが副社長の森さんと起業されたのは二年前、大学三年生のときだったと伺っています」
 
 私は頷く。
 
「学生二人で興した会社に、人を雇える余裕なんてないに決まっているでしょう?」

「そんなわけないです」
 
 彼らは投資していたから資金はあったはず。
 しかし、彼女は自信たっぷりに告げた。
 
「お二人は最近、大損しているんですよ」
 
 信用調査をしたから知っているのだと言う。

「あなたを雇うと言った手前、すぐに退職させるなんて、できないじゃないですか」
 
「……そんな……」
 
 武尊も森君も、飄々としていた。
 でも、たまに二人が思い詰めた顔をしていたり。私がいないと思って、言い争いをしていたときがあった。
 どうして教えてくれないんだろう。知ってたら、二人にだけ辛い思いをさせなかったのに。
 
「二人とも、本来の研究や営業を後回しにして、金策に走り回ってるの、ご存知ないんですか?」
 
 ないです。お給与計算も、経理も税理士に任せていた。
 
「さすがにバイトに毛が生えた程度の従業員に、内情をばらせませんもの」
 
 今や女性は、私をバカにする態度を隠そうとはしなかった。
 
「彼が私と結婚すれば、父から業務提携してもらえる。資金も潤沢になる。別れてあげるべきだと思いませんか?」
 
 
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