恋の障壁は0.1㌧!〜痩せたら大好きな彼に復讐しようと思ってました、だがしかし〜

3.

 諭された。
 それはそうかもしれない。

「だけど!」

 反論すべく、キッと彼女をにらみつけけた。
 
「結婚は個人の自由であるべきです。なんとか、あなたからお父様に業務提携をお願いできませんか!」
 
 私は彼女に頭を下げた。
 数秒のち、無情な言葉が降ってきた。
 
「『あなたを騙すのは、簡単だった』って深山さんは言ってました」 
 
 のろのろと頭を上げる。
 彼女は美しい顔にとても残酷な笑みを浮かべていた。
 
「『プレゼン資料が作るのが得意な女子学生を、安く働かせるには』って考えて。『俺が微笑めば一発』って思われたそうですよ」
 
「……そんなこと……」
 
 彼が言うわけない。
 でも、一目惚れしたのは私からだった。
 私は彼に笑いかけてもらって、話しかけてもらえるだけで満足だ。
 褒めてもらえるのが嬉しくて、残業も休日出勤もせっせとこなしている。
 彼との予定を最優先にしていた。
 
「深山さんと旅行に行かれるそうですね?」
 
 ぎくり、と体がこわばる。なんで、この人がそんなことを知っているの?
 
「彼は私には隠し事をしないんです」 
「……うそ……」
 
 呆然とした私に、女性は勝利を確信したのだろう。す、と綺麗に立ち上がる。

「深山さんはね。デブネさんより、スレンダーな女性が好きだそうですよ?」
 
 パタン。
 私は、彼女が出て行った後の扉をずっと見つめていた。

 
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