恋の障壁は0.1㌧!〜痩せたら大好きな彼に復讐しようと思ってました、だがしかし〜

2.

 翌日、四苦八苦した末、病院に行った。
 てっきり不治の病を宣告されると思ったら、病名は「ぎっくり腰」
 
「これがかの有名な……!」
 
 こんなに大変だとは。
 舐めてた。甘く見ていた。
 ここまで辛いだなんて、予想外。

 しみじみと感動していた私に、お医者さんは言った。

「出船さんの場合、単に骨が体重を支えきれてないの」

「……私は生まれつき骨が脆い、といった病気なんでしょうか」

 体重うんぬんについてはナチュラルにスルーして、おそるおそる聞いてみる。
 先生に思いっきり笑われた。

「健康優良児そのものだよ。ただ、重すぎるの。百五十八センチで二十代女性の適正体重はね、五十四・九キロ。わかる?」 
 
 え、嘘でしょう、というのが正直な気持ち。
 目を真ん丸くして固まっている私が理解できていないとわかったのだろう、医師は噛んで含めるような口調になった。
 
「出船さんはね、四十キロ以上余分な重さを背負ってるの。言い換えれば、あなたは自分以外に余計な人間を一人背負って生きてるようなもんなの。で、合計百キロ」

 衝撃だった。
 百キロといえば、〇・一トンではないか!
 
「……まさか、自分に『トン』と言う単位が使えるとは思ってもみませんでした……」
 
 呆然と呟いたら、先生がおかしそうな顔になる。
 
「うん、まあ。その認識は正しいけど。普通の人は自分に『トン』は使わないよね」
 
 医師の言葉尻が震えていたけれど、気にする余裕はない。
 自分がそんなに重いなんて考えてもみなかった。
 ……毎年服のサイズが大きくなるよなあ、なんて思ってはいたけれど。

「腰痛ベルトと湿布出しておくから。あと、これ、健全な生活を送るためのリーフレットね」

 血液検査の結果がわかる一週間後に再来院の予約をさせられて、またしても私はタクシーを呼んで帰路に着いたのだった。
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