恋の障壁は0.1㌧!〜痩せたら大好きな彼に復讐しようと思ってました、だがしかし〜
二十三歳半〜痩せたら、彼に復讐してやります!〜

1.

 ……あの悪夢のような日々から半年。
 腰を痛めて一週間後。
 なんとか出勤した。

「優希ちゃん! ぎっくり腰だって? 食べ過ぎの運動しなさすぎによる、太りすぎだよ!」
 
 待ち構えていた森君に開口一番、怒られた。
 ううう、正論が痛い。
 
「だってストレスでぇ」 
 
 泣きついてみたが、森君は斟酌してくれない。
 
「ストレスを持ってない人間なんていない」
 
 ですよね!
 私が納得していると、森君がとっても重たい表情で告げた。
 
「優希ちゃん。武尊から結婚するって連絡があった」
「え」
 
 最初、意味がわからなかった。
 段々、意味が頭に染み込んでくる。

「……もう?」
「ああ」

 まだ、私と別れてたった半年なのに?
 
「あの、医療メーカーの令嬢と?」
「別の人」
 
 震えながら問えば、森君の返事はあっさりしたものだった。

 よかった。でも、よくない。
 私でないことに変更はないのだから。

 半年前あれだけ泣いたのに、まだ涙が出そうになる。
『寝ても覚めても武尊のことをばっかりだった自分を、新天地で見直そう』と決めていたのに。
 
「あいつ、自分の婚約パーティに、立ち上げの苦労を共にした、優希ちゃんを呼ぶ気満々なんだ」
 
 なんて非情な男なのだろう。
 私がまだ武尊を思って、メソメソしているというのに!
 私は怒りでメラメラと燃え上がっていた。
 今なら腰サポーターのおかげと激した感情のおかげでスタスタ歩けそう!
 
「ねえ、優希ちゃん。武尊を驚かせてみないか?」 
 
 森君が至極真面目な顔で私に話を持ちかけてきた。

「……なにを?」
 
「令嬢に『デブネ』て揶揄われて悔しかったんだろう?」
 
 こくんと頷く。
 子供の頃から今まで、ずっと悔しかった。心に蓋をしていただけで。
 
「美ボディになって、武尊はもちろん列席者をあっと言わせてみたくないか?」

「……私。三日坊主どころか、一日尼なんだけど」
 
 情けない表情を浮かべた私に、森君はちょっと笑った。
 
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