恋の障壁は0.1㌧!〜痩せたら大好きな彼に復讐しようと思ってました、だがしかし〜

6.

『ねえ、優希。君のダイエットの目的は何?』
 
 画面の中からVチューバーが問いかけてくる。
 
「私を裏切った恋人にざまぁしてやるの!」
 
 キッパリ言うと、アバターが沈黙した。

 きっと、『ざまぁ』という言葉の意味を検索しているのだ。……悪意について、プロミングされていないのだろう。
 
『様見ろ、の俗語。人の不幸や失敗に対して発する、ののしりの言葉。優希は恋人の不幸を罵るの?』
 
 真面目に聞かれたので、自分の心の内に聞いてみる。
 
「武尊の不幸なんて、望んでない。……むしろ幸せになってほしい。でも、私じゃない他の誰かの隣じゃ、イヤ」

 私のそばにいてほしい。
 武尊にもそうであってくれればいいのに。
 
「でも、私を騙して振って捨てたことは後悔させてやりたい」
 
『武尊は、優希を騙して振って捨てたんだね』
 
 AIはこういう所が嫌だ。
 なんの感情もなく、こちらにとっての致命傷を投げつけてくる。
 私は項垂れる。
 
「……そうよ。あの人ってば、なんでも言うことを聞いてくれる人形欲しさに、私に好きって言ったの」

 恋人に踊らされたことを認めるのは惨めだ。
 
 
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