恋の障壁は0.1㌧!〜痩せたら大好きな彼に復讐しようと思ってました、だがしかし〜

12.

 自分のために体を作っていく。
 ようやくそのことに気がついた私は、ちょっとだけ積極的になった。

 ある日、ワークアウト中にDatingに質問された。

『優希は武尊を嘘つきだったと言う。彼のどんな所が嘘つきだった?』

 私は考え込む。

 初めて会った時、彼はお腹を空かしていた。
 これは本当。

 私の作ったお弁当を、『美味しい』と平らげてくれた。
 これは……多分、あの美味しそうな表情からして、本当。

 彼が体調を崩した時、気づかう私に『大丈夫』と笑ってくれた。
 これは嘘。

 私の意見が貴重だと、資料作成能力やマネジメント能力もすごいと褒めてくれた。
 これは本当だと思う。
 自分でも自信のある分野だ。

 どう思ってのことにせよ、武尊は森君に自分を恋人だと紹介してくれた。

 カミングアウトすると、森君との関係がギクシャクしかねない。だから私としては、自分達がお付き合いしているなんて言わなくてもいいと思っていた。

 けれど、彼は真っ先に告げに行ってくれたのだ。
 これは本当、ううん事実。

 株をやっている武尊と森君が大損をして会社の資金繰りに四苦八苦している。
 ……これは、嘘? それとも本当?

 私は資金集めに戦力にならないと思われていた?
 それとも、心配をかけさせまいとして?

 どちらでも構わない。
 苦しくても、彼らは私を雇い止めしなかった。
 それが事実だ。
 
「武尊には、優しい嘘しかつかれていない。……私に心配かけさせまいとして」

 気がつくと、幾すじもの涙をこぼしている。

「武尊はなんで私を好きになったのかな?」
 
『聞いてないの?』
 
 アバターは驚いた顔をする。
 本当によく出来ている。
 森君は多忙なのに、よくもここまで仕上げたものだと思う。
 
『質問してみるといい。武尊は教えてくれるよ』
 
「わかった」
 
 彼がどんな反応をするかで、誰が嘘つきだったかわかる。

 
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