恋の障壁は0.1㌧!〜痩せたら大好きな彼に復讐しようと思ってました、だがしかし〜
現在二十五歳、彼と向き合う

1.

 一年半後。
 明日は武尊が帰国すると言う前日。

「五十四キロ……!」
体重計に乗った私は、つい歓声をあげた。

「おめでとう、優希。よく頑張ったね」

 アバターが褒めてくれた。

「ありがとう、Dating!」

 多分、私は笑顔だったと思う。
 Datingは眩しそうな表情を浮かべている。

 色々な出来事があった。

 私をどん底に突き落とした、医療メーカーの令嬢が結婚した。
 (海外に行ってしまった武尊を待てなかったらしい)
 森君に恋人が出来た。

 私が痩せるにしたがって、周囲の目が変わっていく。
『デブネ』とバカにしてきた人達、特に大学生達がデートに誘ってくるようになった。
 森君が睨みをきかせてくれたけれど、手のひら返しは私に苦い想いをさせ。

 治っていた暴食をしてしまった。

「ごめんなさい、Dating……!」

 私が謝ると、アバターは顔を歪ませる。

『優希を傷つけた奴ら、殺してやりたい……!』

 物騒。
 森君はDatingにロボット三原則を教えてないの?
 アバターのテンションの高さに、逆に冷静になった。

『大丈夫? 優希』

 Datingが心配してくれる。

「所詮、見た目なんだよね」
 
 デブだと『空間を占有するな』って睨まれる。
 教室や研究室を歩くと『地震か?』って騒がれる。

 初ギックリ腰以降クセになってしまったようで、ちょいちょい病院に行けば、若い医師に『急激に体重が増えると腰に負担かかりますよ』って言われた。
 先月より五キロ落としたんですけど⁈

「ちょっと痩せたからって、チヤホヤしだして!」

 教授のお供で天麩羅屋さんにいったとき。
 お店が入ってるホテルのスタッフ、明らかに態度を変えてきた。
 研究室の学生達が荷物を持ってくれるようになった。

「私の中身なんて関係ないじゃん……」

 中身は変わってないのに。
 落ち込んでいると。

「優希、愛してる」

 爆弾を落とされた。
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