恋の障壁は0.1㌧!〜痩せたら大好きな彼に復讐しようと思ってました、だがしかし〜

8.

 ……嘘、だったのだろうか。

 武尊は、私が髪を切ったりメイクを変えると、必ず気がついてくれた。
 森君は、私が女の子の日で体調が思わしくない日は、ジンジャーティーを作ってくれた。

 二人とも仕事内容も結果の業績も、苦境も教えてくれた。

 武尊は二人っきりだと甘えてくれた。
 ベッドで私を押し倒すとき、とても男で雄で。
『私がほしい』と全身で叫んでくれていた。

 武尊を見れば、必ず視線が合う。
 そして森君にわからないようにサインをくれるのだ。
 ……。

『武尊が小鼻をこするとき、優希ちゃんが可愛いってデレてるんだよ』
『あいつがじーっと優希ちゃんのこと見つめてる時は性欲MAXだから。明日有給とっておく?』
 とか。
 森君には全部バレていたみたい。
 
 武尊は、私の誕生日でもないしホワイトデーでもないのに、プレゼントをくれたがった。

『優希を、俺のあげたもので埋め尽くしたい! ……重たいな、俺。束縛彼氏か』

 そういいつつ、万年筆とボールペンのセットを二人でシェアしたりとか。
 ペアウオッチを買ってくれたりとか。
 三人で会社関係のパーティに回る時は、どこかしらにペアだとわかる物を私に身につけさせたがっていた。

 ……あれが全部、嘘?
 私の唇は無意識に言葉を紬いでいた。

「武尊がしてくれたことが嘘なら、事実なんていらない」

 愛されていた。
 たとえ嘘でも、あれ以上の真実なんて、どこにもない。

『前はさ。Boyz be ambitious。てっぺん取ったる!って思ってたんだ』

 恋人になって初めて体を重ねた次の朝。
 私が寝てると思って、武尊が語りかけてくる。

『なのに優希と知り合ってから。優希が幸せで、俺に笑いかけてくれたら、すごい幸せって思うようになっちゃった』

 武尊はあのとき、どんな表情をしていたのだろう。
 寝たふりをしていたから、彼の表情はわからない。

『俺をこんなに惚れさせたんだから、責任をとってもらうから』
 愛おしそうな、嬉しそうな、幸せそうな声だった。

 私のほっぺを涙がいく筋も流れ落ちてゆく。

 ……あれが嘘なわけ、ない。
 


◇■◇ ◇■◇

 ワークアウトを終えた頃、森君が恋人の万里子さんと迎えにきてくれた。

「今日が武尊の婚約パーティの日だ。優希ちゃん、答え合わせをしよう」

「うん」
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