恋の障壁は0.1㌧!〜痩せたら大好きな彼に復讐しようと思ってました、だがしかし〜

11,

「好きだ、今でも大好きだ」

 切なそうに苦しそうに言われて、自分も苦しくなる。
 彼の表情が『嘘』なら、結婚詐欺師は一人も存在しなくなる。

「優希と一緒に過ごしたかった。好きじゃなきゃ、こんな不安定な仕事に誘わない。お前に心配かけさせない、と発奮しまくった」

 じゃあ。

「あの人のことは?」

 彼女のことを思うだけで、どす黒い思いに苛まれる。

「……あの人?」

 記憶がないみたいな武尊の表情。
 某医療メーカーの令嬢兼社長秘書の名前をあげた。
 とたんすっごく嫌そうな顔をする。

「『しつけの悪い娘さんですね』と、親にクレームを入れた」

「え!」

 さらには武尊のほうから業務提携を断ったのだと。

「なんでそんなことっ……」

 私が青くなって訊けば、武尊は怖いくらいの目力で見つめてくる。

「惚れた女を傷つけるような会社に尻尾振るほど、プライド捨ててないんでね」

 どうしよう、にやけたくなってしまう。

「代わりに業務提携したのが万里子さんの会社」

 令嬢の所属しているメーカーより大手。
 万里子さんは企画室でジュニア・マネージャーを任せられている。
 権限は令嬢の父親より大きいかもしれないと。

「そっか」

 ならよかった。

「他には?なんでも話す。訊いてくれ」

「じゃあ」

 ゴクリと唾を飲み込む。

「Datingの中の人って、武尊?」

 武尊はまっすぐ私の目を見たまま答えた。

「ああ」
< 43 / 47 >

この作品をシェア

pagetop